『そういや、最初は警戒してたよな』
そりゃ当たり前でしょ。
あんなことやらかしといて良く言うわよ。
[思わず言葉を返した。生きていた時と同じように。
そのくらい自然に、彼が話しかけてきていたから。]
[初めてゼルに会ったのは、まだあたしのダンスが楽団の前座しか任せてもらえていなかった頃。
タチの悪い客に目をつけられていて、その客が出入り禁止にされたすぐ後のことだった。
誰かの手引きでその客が入ってきていて、前座を務めるあたしに抱きつこうとして。
それを殴って止めてくれたのが、ゼルだった。ありがとう、そう言おうとした時のゼルのぼやきが忘れられない。
「あんたさ、絶対暴れないって約束だったでっしょ?契約違反もいいとこだぜ」
その一言で、ゼルもお縄になって。
でも、それが縁でしばらく一緒に生活することになったんだから、何がどう転ぶかってのは本当にわからない。]