は―――…あとどれくらい拾えばいいのかしら。
[両手を見れば、そこから黒い靄がゆると出てくるときがある。
少しづつだが、ジョエルと似たような状況になりつつあるのが見て取れた。
これは業だ。自分が奪った命の数だけ、黒い靄は自分を呪うのだろう。
逃げたってどこからか靄はやってきて、自分を呪った。
ひやりとした物を背に感じる。
思い出すのは同僚だった青年の、消える間際の暗い笑み。
同情はしない、同僚だった人は自ら進んでそちら側いったのだから。
戻る機会を自ら無くした。それは仕方ない事だったのかもしれないが。少し、腹も立つ。]
…大丈夫。私は、ああはならない。
[あんな風にはなりたくなかった。
そう思うのは闇の中でしか生かせて貰えなかった自分が、誰かに想いやられる幸せと、誰かを想いやる幸せを知ってしまったため。
だから靄を全部拾い集めて、過去を喰らって、それでも『私』でいるんだと。
そう決めた。]