『ってかなんで未だに仲良くなったかわからんのだがな』
そりゃ、あんたはわかんないでしょうねぇ。
でも、あたしは。
[損害賠償するにも手持ちが無いというゼルに。
お義父さんが「なら身体で返せ」と楽団の中に引っ張り込んで。
最初は、一緒にご飯を食べることすら嫌がるゼルを無理やり引きずって食卓を共にさせたり苦労もしたけれど。
例えるなら、行儀の良い野良猫を手懐けるみたいな感覚だったりもしたけれど。
そうやって一緒に暮らしていくうち、ゼルが悪いヤツじゃないとか。
変わってるけど、自分の中の筋は通すヤツだとか。
わかりにくいけど、優しいヤツなんだとか。
そういうことが解っていって、ゆっくりと。
あんたを、好きになっていった。]