[青年が急流に姿を消した後。
『場』が崩れたのを感じ取ったか首まで伸びていたツルや花は、以前と同じ位置まで戻っていたのだが。
白かった花は朱く染まり、花弁は開いたままとなっていた。
後処理と口裏合わせは、橋が開通する前にしっかとしていた…かもしれない。]
[――年は、流れ。
祖父や様々な人の死。
何より一番慕っていた青年が、行方知れずとなった後も。
少女は、以前と同じ家に住み続けていた。
―否。
少女と言うのには、もう適切ではないかもしれない。
青年が行方知れずとなった年齢と同じになるだけの年月を重ねていたから。
事件の後、ローザに一緒に家に住まないか、と誘われたりもしたのだが。
小さく頭を振って]
何時、エリお兄ちゃんが戻ってくるか分からないから。
あたしはここにいる。
…でも、誘ってくれてありがと、お義姉ちゃん。
[と、少女だった女性は口にした。]