『必ず継がれるとは限らないはずが……イレーネ?』
[独り言めいたコエ>>462が引っかかり、存在しない残り香から意識を逸らす。
血による継承。その話の先にあったからだろうか。少し考えて、姪の名前を思い出した。
家を出てから一度だけ、兄の下に顔を出したときにはまだ赤子だったアイリーン]
『同胞であれば、疑いをかけたくなるところだ。
兄の所の末娘が同じ名をつけらえていたからな』
[それが真実、同一人物であるとまでは、そう気付けるはずも無く。
なんとも言えないと言われて、皮肉に哂った]
『そうとでも思わなければ……狂いそうだ』
[己が手に掛けなかったのは、良かったのか悪かったのか。
人としての根源さえも揺らいでしまいそうな衝撃は、まだ身の裡に残っている。
それを引き止めるのは、朱花を抱くとは知らなかった娘との淡く懐かしい記憶と。コエの向こうに垣間見える、奇跡のような関係]