えっ……あの、はい……――――
[彼が示した1つの条件は、青年にとって意外なものだった。
瞬く紅で、けれどコクリと深く頷いた。
イレーネの父親が示した条件は
―――……命を差し出すのは最期にしなさい、と。
その手段を簡単に選ばずに、できるだけ長い間イレーネの傍で生きること。
果たしてイレーネは、この言葉をどのように受け取っていただろうか。この約束が、それ以降、子ができたというだけでなく、ゼルギウスが彼女に自分を食べてと謂わなくなった理由。
許可を得れた青年は、改めて未来の妻に向き直り、小さな箱を開けて中身を見せながら請うた]
イレーネ、私と、結婚してくれますか?
[小さな箱の中、群青の石が嵌る指輪は『銀』に光っていた。
後で、人狼に銀の指輪を贈る莫迦が何処にいるんだ!!
と、呆れたのはきっと漆黒の毛並みを持つ彼であったのだろう*]