全てが夢であったなら良かったけれど、起こったことは現実で。
区画が解放されて、まず行ったのは同僚とその恋人の身体がある場所だった。
そのままにすれば恐らく身元不明で処分されてしまうだろうと思ったから、なんとか彼女と彼を家族の元に戻してあげたくて。
急ぎ歩いている途中、初老の夫婦に声をかけられた。
彼女の、両親だった。
彼女の両親は、区画が閉鎖されてからずっと、解放されるのを待っていたらしく、消耗しきっていて。
私が二人を彼女の元へと連れて行くと、礼を言われたが、ただ首を振るだけしかできなかった。
だって、彼女は死んで、私は生きている。
人の命を奪ってまで、生きている。
むしろ、人殺しと罵られたほうが、良かった。
そんなことを思ったが、それでも。
私は、生きている。