─ 黒珊瑚亭 二階・五号室 ─ユリ。[獣の笑みが、自分の馴染み深いそれに変わると、一瞬驚きに目を瞠った。が、続く言葉に、それを苦笑に変えて]ばっかだなぁ。両手に収まらなくたって、大切に思う位良いじゃねーか。そもそも守りたいもんが大人しく守られてくれる保証もねーし。[背から手を離し、向き直る。最期に対峙した時のように、笑って]一番がいいなら、まずお前から手を伸ばせよ。欲しいって言われなきゃ、伝わらねーんだからさ。[差し出したのは銀の煌き持たぬ、自分の右手**]