[厩舎の方に向かうと、ナーセルに飼葉と水を与えて]
ユリアンの父ちゃんが戻ったら、引き取ってもらうから、それまではうちでゆっくりしてけよ。
しばらくはお客さん、お前だけだからよ。
[そっとその頭を撫でてから、向かうのは、あの場所へ……
ライヒアルトとアーベルの血の痕を見ると、あのときのことを鮮明に思い出し、
こらえていたものが、涙として零れ落ちた]
掃除…しないとな……
[血の痕を洗い流すことはできても、起きた事実も、感情も洗い流すことはできない]
なかなか、落ちない…な……
[広がる血の痕は、緩慢な動きで掃除をしているためか、なかなか落とすことができずにいた。
すべての作業が終わったのは夕方過ぎ頃で、自室に戻ると疲れたようにそのまま寝た。
それから2,3日はナーセルの世話以外に外にでることはなく、日課の日記も書かなくなり、自室に引きこもっていた]