─ 黒珊瑚亭 二階 五号室 ─覚えてないのかよ。薄情だなぁ。[拍子抜けしたように力が抜ける。肯定が返った方がきっと照れてしまっただろうからこの加減が自分には調度良いように思えた]ふん、相思相愛だったなら今更か。――…本心ならありがたく受け取っておくよ。[否定されるべき存在であると思い続けていたから肯定の言葉がただ嬉しく心に沁みる]伝えずに後悔するのはもう沢山だから言っておきたかったんだ。[言葉にしつくせぬ思いの一部を言葉にした男はゆるやかにわらってそれを伝える]