[ギュン爺の家に泊まりこんだ何日目か。
祖父とギュン爺がエリの今後を話しているのを聞いた。
都会にいる叔父夫婦が迎えに来るのだという]
……エリ。
[自分がこの村に馴染むまで時間が掛かったように、エリも苦労をするだろうか。
子供の知識でも何か役に立てないかと思って考え、思い出したのは財布の存在だった。
まだ母が生きていた頃、気紛れのように父がくれた財布。
大切に仕舞い込んだまま、村では使う機会も無く綺麗なままで]
これ、餞別。
[剥き出しのまま渡そうとすると、エリは困惑の表情を浮かべていた]
町だと必要。
おれは、ここにいれば使わない、から。