[ユリアンは死して尚、食人の衝動を否定は出来ない。
生きる為に必要な事だった。
傍らに居る友は看取ると言えば緩慢な自死も考えなくもないが
それをしてもこの友は心を痛めてしまうだろうから
そうならぬよう取引を持ちかけ負担を減らしたいとも思っていたのだけど
さいごのさいごに共に生きること願ってしまったのは失態と思う。
他にそれを託し頼める相手を考えてエーリッヒの顔が過ぎりはするが
傍に居ない彼にこえもことばも届けられないのだから――]
…………。
[ふと最期の一時を思い出し、目を閉じる。
振り返り後悔してもしきれぬ何かが蟠りはしたが
今となってはどうにもできぬことともわかっていた。
ゆっくりと目をあけてアーベルを見遣り]
嬉しいと思って貰えたなら光栄だ。
――…礼もありがたく受け取っておくよ。
[こく、と頷いて口の端をあげた]