[アーベルが己を襲った人狼に対しての考えを聞き唸ったのは
ロミの考えが知れぬからであり
アーベルの優しさであるとも知れたから
水の気配隠そうとするなら其れを目にする事はなく]
ん。
[呼ぶ声に人の姿で応える。
ゆっくりと彼の方を向けば微かに色を濃くする双眸があり]
――…そうだな。
お前の懐の深さには完敗だよ。
守りたくても守れないこともある――…
反対に守ろうと身を削ることも……
[大切はひとつでは収まらないのは当然で
それでも多くのうちの一つならば捨て置かれる可能性を考えずにはいられない。
アーベルならば器用に全てを選ぶのだろうか。
じ、と見詰めた後、敵わないかという風に息を吐き出した]