[数分の後。濃緑色のカバーつきの文庫本を片手に、店員の声を背に外へと出てきた。同時に襲い来るむっとした熱気に顔をしかめながら、]あれ、牧原さん。[ふと道の先にクラスメイトの少女の姿を見つけ、極軽い調子で声を掛ける。]あーうん。妹に頼まれてさぁ。牧原さんは今帰り?[たわいもない話を続けながら、もう10分も歩けば寮が見えて来る*筈だ。*]