[言うだけ言うと、老婦人はカルメンを追い出すようにその背中を出入口へ向けて押す。
まるでその話題には触れたくないとでも言うように。
されるがままに、カルメンは家を追い出された。
見えぬ瞳は閉じる扉の音がする方へと向けられる]
…ばーちゃ。
カーラ、は、クーリェ、わすれ、ない。
たいせつ、な、ひと、わすれちゃ、ダメ。
いっしょ、いれた、あかし、わすれちゃ、ダメ、なの。
じぶん、の、ためにも、そのひと、の、ためにも。
だから、ばーちゃ、も、わすれ、ないで、あげて。
[扉越しに告げた言葉。
それに返答は無かったけれど、無言こそが全てを物語っている気がした]