[ザ――、と強風が吹く。
雪解け水が舞い上がり、春を告げる花を植えた場所に女性の姿が形作られる。
今、命の火を消した老女の若かりし頃。
行方の知れぬ青年と同じ齢の、姿。]
――結局、生きてる間に、あの人と再会は出来なかった、なぁ。
[雪解け水によって形作られた手を眺めて、女性はただ、苦笑う。]
毎日毎日、森を探して。あの人の為に料理を作って。花もいっぱい植えて。
――春を告げる花を、一緒に並んで見る、って約束。守れなかったなぁ。
[女性は、一つため息をついて。]
ま、今度は、こっちが待てばいいんだし。
こんだけ咲いてれば、きっと気付くでしょ。
[女性は背筋を伸ばし、あたりを見回した。]