― 回想/令嬢を追って ―[星詠の人に手を差し出したのは、殆ど無意識だった。ただ追いつくだけなら、自分だけが追った方が早かったにも関わらず。そのことに気がついたのは、令嬢に追いついた後(>>534)のこと。ノーラが、遅れて追いついたハインリヒが、彼女に話しかけるのを聞く。ハインリヒの咳に紛れるように、一つ咳を吐く。ノーラの手を引いたままだったろうか。そうだとしても、その時に繋がりは離れ、その手は口元に。また、微かな紅混じりの砂を見る――まだ大丈夫だと思いこむ。]