[…手紙を書いた。絶望を。疑念を。恨みを。渇望を。共に暮らす者たちに。世話になった師に。何処にいるか分からない親に。離れた地の友人に。文はどれも半端に切れていて、文字は普段と似つかぬ程に乱れた。誰にも届けられず、けれど棄てられない叫びで引き出しが埋まった頃、手紙を書くのを止めた。そしていつしか、そんな手紙を書いたことすら忘れていた]