― 狭間 ―
[子供の自分を、黙って迎え入れてくれた年上の少年。
彼の作る音色は楽しそうで、穏やかで、なのに何処か寂しそうにも聞こえた。
その心を、静かな天鵞絨の奥を、知りたいと思っていたのは、きっとずっと前から。
――今に成って気付くなんて、遅い、と、言われてしまうのだろうけれど。]
……ライ、さ
[ああ、と。声に成らない呼気を零した。
大切と、特別と。
差し出された真摯な言葉が、髪に添えられた指先>>600が、優しくて愛惜しくて。
一度緩んだ涙腺が、再び雫を落とそうとするのを、歯を結んで堪えるけれど、]
…、っ、
[静かに鼓膜を揺らす、小さな声。
嗚咽が一つ己の喉を引っ掻いて、真逆、表情は綻んだ。
心からの、嬉しさで。]