[どれ程の時間が経った頃だろうか。足音が彼の耳に届いた。徐々に近付いて来たそれはすぐ目の前で止まり、眼はその足をぼんやりと映す]…ヴィリー=アンハルト。[上から降ってきた聞き覚えのある声に、顔は上げずに呟いた。最早友人として呼ぶことは赦されない名前。収容所を出てしまえば、二度と会うこともないだろうと思っていた]