どうして、
……!
[彼が問おうとしたのと、男が次の言葉を発したのはどちらが早かっただろう。
それまで力無く凭れたままだった身体が、ぴくりと動いた。
小さく息を飲む音。
やがて、口許が薄く笑みを形作る]
…それで。
どうするつもりだい。
[知られたくはなかった。
だが知られたからと言って彼自身は何も変わりはしない。
今更口を割るつもりもない。
それは雇用主への忠誠というよりは、言うことに意味を見出だせなかったからというのが大きい。
言ったところで罪を犯したことに変わりはない。
ましてや、間近に迫る終わりが遠ざかる筈もない]