─灯台傍─
[物言わぬ骸となったエルゼとゲルダを前に、動けずにいた。
どれだけそうしていただろう、フォルカーは未だ傍に居たろうか。
岬を吹く風の音しか聞こえない静寂の中、不意に。
自分を呼ぶ、声が聞こえた。]
…ぇ…
──…ヴァル、ター…?
[ゆるりと振り返ると、こちらへと駆けてくるその姿が見えた。
どうして、と思う間も無く肩を掴まれ、揺さぶられる。
怪我は無いかとか、身体は大事無いかとか矢継ぎ早に問われれば頷きを返したものの、何故彼が此処にいるのか不思議で。]
…どうして、ヴァルターが此処に?
アーベルが自衛団の方やエステル先生を呼びに行ったのだけれど…アーベル、は?