[何が起きたのか、起きていたのかわからなかった。
認識できたのは、喪失感だけ。
その場は悲鳴を上げて、そのまま意識を失って──]
……まあ、なんていうか。
全部あげた恋人に先立たれて後追いとか。
今にして思えば、乙女思考だったよなぁ……。
[それでもその時は、それしか思いつかなかったから、ためらわずに手首を切って。
でも、結局死ねなくて。
地元に居辛くなって独り暮らしを始めて。
その果てが、こうで]
あー……親不孝すぎ。
[苦笑しながら言って、ぐしゃ、と髪をかき上げる。
表情は、手の下に隠した]