[喉を鳴らす漆黒に、微か目を伏せ背をなで続ける。
湖畔で泣いた自分にこの人がそうしてくれたように。]
ライ兄は、悪くないよ。
私は、憎んだりしないよ。
[自分を喰らったのがこの人であっても。
覚悟はいつか出来ていた、自分の命がこの人の…イレーネの役に立てたのなら、それで充分だと思っていた。
だから─…]
それでもライ兄が、自分のこと悪いって、いうなら…
─…私がライ兄を、許すから。
[もう、言わないでと。
いつか、彼が自分に言ってくれたように。
気休めでも、どうか伝わりますようにと、背を撫でる指先が震えた。**]