[思い切り笑われたなら、確実に拗ねる自信があった。
それが最初に無かったのはオレにとって僥倖だったことだろう]
…忘れられるはずが無いだろ。
[オレがしてしまったことを。
あれは忘れてはいけないことだと思う。
問いにはまだ口を噤んだまま、オレは引き寄せたゲルダをそのままぎゅっと抱き締めた]
……────ごめん。
ごめん、ゲルダ──………。
[ゲルダの肩口に顔を埋めて、オレは耳元に囁くようにして謝罪の言葉を紡いだ。
声は震えて。
顔は泣きそうになっていたけど、それはゲルダから隠したまま。
ゲルダを死なせてしまったのは獣の意識に支配されたオレだったから。
それに対しての痛みだけは、消えることが無かった]