―― 6の部屋 ――
[奥にある暗い階段から、ノーラとエーリッヒの声が降ってきた。
ブリジットや、ハインリヒや、ヘルムートがまだ部屋の中にいるなら会釈する。ただ、その返事を聞いてしまうと奥の階段に踏み込む気にはならなくて]
ん ン
きてない、ですか
[空咳をすることで声の調子を整えようとしながら、少し考える。
あまり改善されない声に、ほんのわずかな時間、瞳の奥に苛立ちの影がよぎった]
見てない、なら いーのです
あ、これは、その、らいじょぶ。だいじょおぶですから。
そんなに数字もすすんで けほ ないですし
[意識が戻ってから、喉以外は小康状態なのは事実だったから。
休んでいればというアドバイスをよそに、ひらりと部屋に残った人に手を振って出て行こうとする]
そうだ。もし、カルメンさんにあった ら。
会ったら………