[そして、今、病院のベッドの上に彼女は居た。
ぼーっと外を眺めていると、廊下の方からドタドタドタと駆けてくる音。それに気づくと、扉の方を見て苦笑い。
間もなく、部屋に飛び込んできたのはスーツに身を包んだヒサタカ。肩で息をしているヒサタカにクスクスと屈託ない笑みを浮かべ]
よかったの? 仕事抜け出してきて。
[そう言うと、ぜぇぜぇ息をしながら彼は言う。]
「仕事なんかどうでもいい。だって一大事だろう」
「それに約束したしな。……子供が生まれたら地球の裏側からでも駆けつけるって」
[そう言って、ヒサタカの小指を立てて出した左手の薬指には銀色のリング。
そう、あれから数年。マリーとヒサタカは結婚し、この度子を授かったのだ。
ヒサタカはキョロキョロと部屋を見渡し]
「……それで、子供は?」
[その言葉ににっこりと笑うと手招き。そして、その笑顔にはほんの少しの悪戯心。
それを知った時彼女はたいそう驚いた。きっとヒサタカも驚くだろう。]