─ 魂のみのせかい ─[微かに瞼が動くが見える。闇の中にあれども伏せられていた長い睫毛は微かに煌めき映る。震えるかのような微かな、その気配に朱金の双眸が僅か緩む]『――ああ、俺だよ。 迎えが遅くなって済まなかった』[軽く詫びながらも咥えて掴んだナターリエの袖は離さず更に力をこめ、彼女の状態を引き寄せる]『ナターリエ、帰ろう』[何処へとも言わず彼女の身体を獣は背に負い深く澱む闇を後ろ足で力の限り蹴り、光さす方へと駆け上がる*]