[掴んだ掌>>628は、気の所為か少し暖かく感じた。
光の無い世界から届く呼び方も涙声も14年前と同じ。
ただ僕の手の中にあるそれは、あの頃より成長した少女の手だった。]
そうか、……彼が。
[生きている人の声は少し遠くて、意識しなければ聞こえて来ない。
ほんの僅かに顔を逸らせば、其処に彼女の“同胞”は居るらしかった。
そう言えばあの時、彼の烏色と目が合った気がした。]
一緒に……か。
[キリルがイヴァンと共に居ることを願い、そう口にしたのなら。
狼が僕を襲い喰ったのは、彼女の為――そう考えるのは、あまりに虫の良い話だろうか。]