[銀細工の職人だった父は、寡黙でむすりとした、文字通り職人気質な人だった。
ゼルギウスの体調が安定してきた頃逆に倒れた父親は、余計に喋らなくなったと思う。
丁度ゼルギウスを連れて来た時期と被ったので、
まさか心労で……と一時期思っていた事もあったとか。
前々から、狼のコエが聞こえる人がいる事と
その人物の所にしょっちゅう遊びに行く事は知られていたし杞憂だとは思うのだが。
胸中は―――父のみぞ知る。]
父さん、ゼルが父さんに話があるって。
[控えめに扉を叩けば、辛うじて返った返事を聞いてから、彼を中へと通し。
特に退出を求められてもいなかったので、少し離れた場所で様子を伺っていた。]