…………。
[たっぷり数泊置いたのは、
父親から決して銀は素手で触るなという教えを受けていたから。
多分未来の夫の事、うっかり忘れてるんだろうな、とは思った。]
(……しょうがないなぁ、この人は。)
[内心で、溜息と苦笑と、
だからやっぱりほっとけないのよね、と言葉が零れたのは秘密。]
……はい、喜んで。
[その箱を手に取り、中から取り出した銀の指輪を躊躇せずに指にはめた。
―――後ほどリヒトに指摘されるまで、銀はそのまま妻の指を飾る事になる。
銀の不快感がチリと指から伝わったが、それに怖じ気づく事なく
頬染めたまま夫となる人に向けた笑みには、母と同じく幸せそうなものだった。