─ 追憶・黒き『書』下る刻 ─
[駆けて行ったティルを見送った後。
その養父母がこちらに気づいたなら、丁寧な礼を一つ返してその場を離れる。
聖夜祭の賑わいは嫌いではない──のだが。
ある事を思い出す日でもあり、思う所は複雑で。
それでも、表層は常の飄々とした態度を崩さぬままに歩いて、飾り付けられた『世界樹の仔』が見える場所で足を止めた]
…………。
[ふ、と、空を見上げる。
雲は出ているが、何かが落ちてくる様相はまだない。
一応、自然に降り出さなくともあるタイミングで降雪するよう、翠樹学科がコントロールウェザーをかける予定のはずなのだが]