[十二の歳。
この頃には、大分力の制御もできるようになっていて、空間転移で城を抜け出す、など日常茶飯事だった。
そうして、外で気ままに過ごし、時に呼び出した魔獣と戯れて、また帰る。
その日も、そんな変わらない一日だと思っていた──のだが。
平穏を切り裂いたのは、凶刃。
騎士の国の王となるには不向きな第一王子を、廃そうとする者が差し向けた刃。
それによって受けた傷は、生来虚弱な身体に深い傷を負わせ。
傷ついたまま、物陰に打ち捨てられた時に、『声』を聞いた]
『……汝、力あるもの。このまま消えるを望むや?』
『……汝、力あるもの。我はその消滅を厭う』
『……汝、力あるもの。生望むなら、我を手に取れ』