─聖殿内部にて─
[訥々と訴える少年の言葉。
巫女はその一つ一つを、静かに受け止めて]
……あなた、お名前は?
[名を問い、答えを得られたなら、その名を小さく口の中で繰り返す]
……『その人のまま』が、どういったものを示すのか、にもよるとは思うのですが……。
『堕天尸』に転じたとて、人は人のまま、本質は変わりはしない、と私は聞いています。
ただ……ほんの少し、冥い部分に捕らわれてしまっただけで。
痛み、苦しみ……それは、あるかも知れません。
けれど。
『虚』に捕らわれるという事は、本来、耐えなくてはならない痛みから逃げてしまったから……。
ですから、その分の痛みを感じる事はあるかも知れません……けれど。
死なせはしません……例え、私の命を削る事となろうとも。
[最後の言葉には、毅然とした決意の響き]