─ 二階・廊下 ─
石像が倒れる音。
死体が壊れたと言う意味だろうか。
[少女の背中を見送り、ゆっくりと歩を進めかけていたところで、手前の部屋から出て来た赤毛の男性と視線が合った。サファイアブルーの瞳で真正面から相手を見詰め返す。
赤色に見覚えがあるような気がするのは、覚醒時に側に居た相手だからだとは瞬時に思い至らず。ダーヴィッドがベアトリーチェに話し掛ける様子を、後ろで見守る。誰に対してもそうだったが、幾分、真正面から見詰め過ぎて、不躾、あるいは値踏みするように見えたかもしれない。]
ノーラ?
衣装部屋には、女性が居るのか。
安全が確認されている部屋なら、行って大丈夫だろう。
ベアトリーチェ。
そして、そちらの申し出は有り難いが、
私が今、女性が着替える部屋に入るわけには。
──ダーヴィット。
[相手の「ああ知っている」と言う表情の変化。「知ってる」に続く言葉を待ったのは。]