[弦特有の繊細な音が、一つ落とされて、止まる。
こちらに向けられた笑みはそれまで奏でられていた音のように楽しげで──
──だからこそ、困惑は更に深くなる。
久しぶりと、こともなげに話す楽士へと向けた問いに返された答えにそれはより増して]
…どうして?
[口から出たのは、短い疑問符。
だって解らない。
自分はこの楽士と親しい訳じゃない。
二度会っただけ、顔と名前しか知らない人だ。
でも、あの『お願い』を引き受けられたのは、この人が「良い人」だからだと、そう思っていた。
齎された結果を楽士の意図は違うんじゃないか、本当は違うことを望んでいたんじゃないか。
そう思いたくて、そうだと言ってほしくてここまできた、けれど]