>>694
[青年の脳裏に浮かぶのは、この学院に来る前の幼き頃。
生みの母は狂い青年を疎い、幻と決め付け。
母は青年を”人である”と認めなかった。
今青年の中ではそれがダブり始めているのだろう]
「あーもう! ……おお?」
[青年を追いかけようとした鴉に先んじてゲルダが駆け出す。
少し呆気に取られていると、周囲のギャラリーが沸き上がった。
それにより我を取り戻し、二人を追いかけ始める]
[あの時青年が叫んだ言葉が、また噂と妄想の種となるとは、青年は知る由もない]
[全速力ながらも青年は持ち前の身体能力でちらほら立つ人の合間を抜けて行く。
すれ違った者にはどこか精神的な苦しさを浮かべた表情が見えたかもしれない。
青年はそのまま寮の裏手側へ抜けようと外を駆け続ける]