恋とは素敵ね、ナースチャ。あの子が、叶わないと解っていても追いかけてしまった気持ち、初めてわかったもの。
[暫く昔の話。
とあるメイドが、貴族と恋に落ちる。
その男との話を、キリルは『あの子』からよく聞いていた。
頬を赤らめて楽しそうに話す姿は、可愛くて、綺麗だった。
こんな風に笑う彼女に適う女性は、そうそう居ないと思えるくらいに。
その後すぐ、貴族はどこかの貴族と結婚した。]
毎日泣いて、泣いて。それでもあの男を責めなかったわ。
[自分が、そうなったとして。どうして『彼』を責められる?]
薔薇が美しいと評する人は多いわ。
でも、日陰の、貧相な薔薇を、…沢山の大輪の中から選ぶ方かしらね?
[アナスタシアの相槌は、…――]