[『自分の色』は教本の中。
素材の選別さえ怠らなければ、手順の手間暇を惜しまなければ、
熱意の下に再現も上回る事も出来ない訳じゃない]
[そうやって、次代の染料師が上書きしていく。
器の色も、表紙の色も、レシピの色も、糸を染める色も、店に置かれる染料も]
……ほんと、情けねぇ。
[忘れてもいいと言ったのは事実だと云うのに、
想像した途端に酷く口惜しい]
[結局、は]
…もう少し、生きたかった、なあ。
[ぺた、と床に座り込み、あまり見上げなかった天井を仰ぐ。
ゆるゆると詰めた物を吐き出して、今、少しだけ**]