― 扉C前 ―
そうですか?
でも、実際そうだったじゃないですか。
[自分と同じ言葉を、おそらくわざと使った相手に、
つられる様に口元を緩ませる。]
詳しいのは、父が此処の医師 兼 研究者でしたから。
僕も、いずれは此処で研究することになっていたでしょうね。
だから、医師が使う場所のパスワードを教えて貰えていたんです。
[変わらない微笑。
けれど彼女のそれより薄い緑の眸が、ほんの僅か陰る。]
……パスワード。どれだったかな。
[混濁した記憶の中から、正しい単語を拾い上げようとする。
ちなみに扉Cに付けられたパネルに並ぶのは、アルファベットだった。]