─ 後日の一幕 ─
「……そう、か」
[届いた報せに、アルベリヒ・ツヴィリンゲは小さく息を吐いた。
兄夫婦の忘れ形見、という事になっている甥が行方不明になった、という手紙。
仔細は書かれてはいないものの、何が起きたのかは、朧気にだが察することはできた]
「……こうなるのは、運命だった……とは。
思いたくはないのだが、な」
[甥は、兄夫婦の実子ではない。
生まれて間もない長男を亡くした兄夫婦が、教会の孤児院から引き取って育てていた子だった。
生まれてすぐに両親を亡くした、というその子を、兄夫婦は実子以上に慈しんでいた、が。
養子縁組を斡旋した孤児院から子供が引き取られた先では、何かしらの惨事が起きる、と。
そんな噂も流れていたから──どこかに、不安は抱えていて。
兄夫婦の死とその状況を聞いた時、それがただの噂ではなかった、と思い知った]