― 広間 ―
[傷だらけの身体>>777には驚きつつも手は止まらなかった。どこで何やってたんだ、と、傷の一つを確かめるように撫でたりはしたが。
そういえば、誤って谷に転落した人を助けていた時、エーリッヒがひょっこりと顔を出したことがある。
人を呼びにいっている暇はないと必死で、最初はいることに気付きもしなかった。ようやく息を吹き返させて、ぐったりしかけたところに届いた拍手。先生付きの呼びかけに返したのは、近づいてきた頭への拳骨だった。からかってないで、村から人呼んで来い、と。
それが当然になってから、どれだけの月日が流れていただろうか]
…っ。
[幻聴のように届いた声に肩を震わせる。いい加減朦朧としてきた意識のなせるもの、自分の思考の一つだと思って。
それも一つの可能性。もっと早くエーリッヒを視ていれば。殺せていれば。死ななかった者は確実にいるはずで。
けれどそんなことを思ったら、手が止まってしまう。残された今の可能性も消してしまう。小さく首を横に振った]