[そう、と白と黒に指を落とす。
数回、確かめるように音色を連ね。
それから一度手を止めて、旋律の形で音をつなげ始めた。
聖歌でもない、土地の歌でもない、ピアノの独奏曲。
穏やかな連なりを耳にしている者など、弾いている自分以外にはない──と。
そう、思っていた、のに]
……っ!?
[その『声』は、全く予想外に飛び込んできた。
驚きと戸惑いで、ピアノを弾く手がぴたりと止まる。
慌てて周囲を見回した天鵞絨が捉えたのは、礼拝堂の入口近くに佇む少女の姿]
……ぇ……ぁ……。
[何をどう言えばいいのか。しばらく言葉が出なかった──けれど]