[破片すら追い越し、すれ違いざまに切り裂こうと彼女の目に飛び込んできたのは、
『何もせずただ立っているだけのラスの姿』]
…………ちっ
[忌々しげに舌打ちをすると、軌道を僅かに内側──正面から衝突するコースに変更。
そしてそのまま腹へとタックル。吹っ飛ぶラス。
あの速度ではラスの内臓のひとつやふたつは逝ってるかもしれない。
なお、彼女自身はごろごろと転がりながら余剰の勢いを殺す。
そうして、スクッと立ち上がるとラスの元へ向かい、馬乗りになって左手でラスの首を掴む。
ラスを見下ろす右眼は元の翠に戻り、冷たい気配を宿す。]
…………なにあれ
ささやかな抵抗のつもり? 笑えないなぁ
[感情の篭らない冷たい声で淡々と呟く。]