― 広間 ―
[すぐに駆けつけてきた、サングラスをかけた胡散臭い雰囲気の医者は。
『えー。若い男なんて診たくないのにー。そっちのオッサンなら喜んで診るけどさー。
子爵の手当てって聞いたから、急いで駆けつけてきたのになー』
などとぶつくさ言いながらも、ゼルギウスと交代してか一緒にか、エーリッヒを診ていただろうか。
ちなみにこの医者。女性相手および年配の同性相手、各数件ずつでの性犯罪での前科者である。一応、腕だけは良いのだが……
そのうちに、顔に見覚えの無い一人が、クレメンスへと近づいてくれば。声を掛ける様子>>792を、怪訝そうな顔で眺めていた。
エーリッヒを見たその男が「死んでいる」という>>793のを聞けば]
………うそ、だ。
[と。そう、呟いた。眩暈がして。先ほどまで支えていた筈の伯父へと、逆にもたれかかったかもしれない。
医者は、その男の話を聞けば、やれやれと言いたそうに手を止めた。長年侯爵の主治医をやってたので、意図を察したのだろうか。
その後のやり取りは、ミハエラの耳には入っていなかった。伯父なり執事なりエーリッヒなり、誰かに何度も呼びかけられれば、現実に引き戻されるだろうが**]