[雑木林に再び脚を踏み入れながら通りなれたその道を歩む。
その道すがらに違和感を感じ、ふと姉は貌を上げた。
―――鼻腔を突く、鉄錆の臭いに。]
『なに、これ…』
[血の気配は近く。嗅ぎ慣れぬその方角へ引き寄せられるままに近づいて。]
『…う、そ… ――――…』
[視界を彩るのは深い翠の他に。
鮮血と、肉片と、つぶれた柘榴の様に地面に広がる、
弟の変わり果てた遺体が、其処に転がっていた。
有り得ない方向に曲がる手足、食い破られた胸は多く喪われていた。
ぽとり、と姉が手にしていた瑠璃が、音を立てて紅い海の中に転がった。]