[題材を決めたのは父だった。
その時はどうしてスティレットを選んだのか教えてくれなかった。
そのうちな、なんて言葉で誤魔化されたままであった理由]
なんでこれ選んだか覚えてる?
[スティレットを軽く掲げて父に尋ねる。
思い出そうとしているのか考えているのか間があいた。
今度も聞けぬままかもしれない。
そう思い視線を外そうとしたその時、父が口を開く気配がした]
「これからどれだけの剣を作り上げようとも
お前が慈悲の心を忘れず
命奪うものでなく大事なものを守るものを作り続けるよう。
それから…………、
お前に神の慈悲があるように、――…だったかな」
[少しだけ照れくさそうに笑いながら父が言う。
父と同じ鍛冶師である男は驚いた風にはたり瞬いた]