[はたして刺客の放った言葉が真実だったのか。
結果から言えば、真実もあり嘘もあり、人を騙すには最高の比率だったと言えよう。
それでも、少年を信じ続けたのならば、その後がどうなっていたのか分からない。
いや。まず間違いなくレナーテは死んでいたはずだ。
刺客は気付けなかったのだ。少年がいることにより、彼女の動きに生彩が無くなっていた事に。
そしてまた、レナーテも気付けなかった。
少年は少年で、守るべきもののために必死に戦い続けていたことに]
[それに気付いたのは、まさに今わの際。
レナーテとその少年の最後の別れの場面でのことだった。
そして、少年は強かった。それは、物理的な力のことではない。ただひたすらに心の強い男だった。
何一つ恨み言を残すわけでも、言い訳をするでもなく、最後までずっと笑っていた。その手に持っていた花をレナーテに差し出し、残したセリフは、ただの一言だけ]
『幸せになって』
[その後のレナーテはひどいものだった。
たがが外れたかのように暴れ続け、襲い来る刺客全てを叩き潰し、その黒幕さえも叩き潰し、そして、全てが終わった後に初めて泣いた。
今でも、その時のセリフは忘れない]