[己が楽士と顔を合わせるのはこれで三度目。
目の前の相手について知っていることなど、たかが知れている。
その白く細い指が、綺麗な旋律だけでなく美味しいお茶やお菓子も作り出すことくらいしか。
それだけしか知らないのに、けれど目の前のこの人は、自分の知る「ユーリさん」ではない、と。
そう感じるのは、楽士の纏う空気のせいだろうか。
今感じている気配は、主を探していると言っていた魔族のそれに近いもの。
>>718どこか艶めいた笑みを零す楽士から一歩、無意識に退いて]
…『悪戯』なんて。
そんなかわいらしいものじゃ、ないでしょう。
[強張る声で返すのは、警戒と困惑。
自分が楽士に対して無警戒だったのは確かだ。
でもそれは、預かり物に対してではなく、自分を狙う者などいないと思っていたからと。
己の「理」に干渉出来る者などいないはずだったから]