[右腕には深い傷。改めて治療されたらしいその場所は、だがまだ鈍い痛みと熱を持っていた。その直上には一部が欠け色褪せた朱花。それでも以前よりは色濃いそれ]「ああ…」[小さく息を呑み、振り返って誰かに訴えかける声。それに答える声にも聞き憶えはあったが。何も心に響かなかった]「…戻りましょう、イレーネ」[コクリと頷く。そうしなければならない。それは分かっていた。生きる為には戻らなければいけないと。だから、素直に従った]